前回に引き続き、日経ビジネスに連載の「ヒットの理由」からの事例紹介です。
地方の金属加工メーカーが上市した「ホットサンドメーカー」のお話をします。
この商品自体とてもイノベーティブな商品でありますが、ひょっとしたらデジタル社会全盛の今の時代でなければ埋もれていたかもしれません。
意外と気づかなかった「食パン2枚は多すぎ」という問題
ホットサンドおいしいですね。うちでもよく食べます。でも、ホットサンドメーカーではなくオーブントースターで作ります。2枚の食パンの間に具を挟んだあとそれを半分にして焼きます。
私はまあまあの量を食べるので食パン2枚分でもちょうど良いのですが、確かに子供さんにとってはちょっと多いかもしれません。私も2枚食べられるのはサンドイッチ用の8枚切りという薄い食パンのせいでもあります。普通のトーストなら4枚切りで1枚しか食べません。
1枚の食パンで作れるホットサンドメーカーはありそうでなかったんですね。これもお客さんがあきらめていた問題(=気が付かない問題)かもしれません。
開発のきっかけは家庭での食事の場面だった
ホットサンドメーカー「ホットサンドソロ」は、新潟県燕市の金属加工メーカーである杉山金属が県内のデザイン会社と立ち上げたチームである「燕三条キッチン研究所」で開発されました。
食パン1枚にお好みの具を載せたら折りたたんでふたを閉めるだけ。そのままコンロなどの火にかけて片面2~3分ずつ焼けば、焼き目のついたできあがり見た目食パン半分のサイズのホットサンドが完成します。
食パン1枚分の分量というのがこの商品のミソなのですが、これは子供が食パン2枚分のホットサンドを食べきれず残しているのを見て発想したそうです。
食パンがちぎれやすいという弱点も克服した
開発段階では、食パンを折りたたむ時に大きな負荷がかかりちぎれやすいという弱点がありました。
何度も試作を繰り返し、食パンがちぎれにくい構造を見出したとのこと。製品化のメドが立ったのは開発に着手してから1年が経過したころでした。開発者の執念が伺えます。
SNSでのバズがきっかけで売れ始めた
2019年10月に発売したものの最初は全く売れませんでした。メーカーや商品の知名度が低く認知を獲得することができなかったのです。いかに良い商品であっても認知を上げることの難しさが伺えます。
最初の緊急事態宣言が発出された2020年4月に流れが変わりました。巣ごもりが増え家庭内で過ごす時間をより充実させたいというニーズの高まりつつある中、ある購入者がSNSで紹介したところ大量の「いいね」を獲得し一気に認知されるようになりました。いわゆる「バズった」状態になったのです。
その後は、実店舗でも直営のECサイトでも注文が殺到し在庫はあっという間にはけてしまいました。今年にかけても好調は続いているそうです。ソロキャンプのプチブームも販売好調の一因のようです。
デジタル社会全盛の今、インターネットを通じてこのような現象は頻繁に起きるようになりました。メーカーや売り手が予期せぬ出来事が起きるということであり、ある時はこのケースのように嬉しい結果となることもあればその逆のケースもあることは肝に銘じて置く必要があります。
さいごに
前回のブログの最後に「デジタルは、時間と空間の制約を取り払いビジネスを拡大させる魔法の杖である」と申し上げました。このホットサンドメーカーの事例もデジタル社会でなければ埋もれていた可能性があります。我々はビジネスパーソンとしても一人の生活者としてもこのような世界で生きていること、そしてポジティブにもネガティブにもデジタルの影響を受け続けることを改めて認識しなければならないと考えます。
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