【ミニブログ】「取締役のスキル開示」の記事を読んで思ったこと

オフィスビルを見上げる

日経新聞の記事に興味を引くものがありました。
「取締役のスキル さらせるか」
という記事です。

東京証券取引所が「スキルマトリックス」などを活用して取締役の技能を投資家に分かるように開示することを求めており、それに対し企業はどのように対応すべきかという内容です。

私はこの記事を読んで思ったこととして、そもそも論として「上場企業の取締役に求められるスキル」を言われて初めて考えるのはいかがなものか、ということです。

スキルマトリックスでポジションに求められるスキルを明らかにする

当新聞記事の冒頭には
「酒とゴルフには自信があるんだけどな」
というある上場企業の取締役のつぶやきがありました。

記事のつかみとしては面白いのですが、これが真実であればこの企業はかなり問題ありと言わざるを得ません。
この方は、高度な企業経営スキルが求められる取締役というポジションになぜ就くことができたのでしょうか。

まずは、スキルマトリックスによってポジションに求められる資質やスキル、能力を明らかにすることが重要です。

スキルマトリックスとは何か

スキルマトリックスとは、そのポジション(ここで言うと各取締役)の職務遂行のために必要とされる資質やスキル、能力、経験を一覧表にまとめたものです。
縦軸に各取締役のポジション、横軸に求められる資質やスキル、経験などが入りマトリックス状に表されます。

この時に「各取締役が取締役会に貢献できる、と判断される経験・素養にマルを付与する」という説明をされる方もいらっしゃいます。しかし本来は、
1.各取締役ポジションに求められるスキルを明らかにする
2.現取締役のスキルを査定する(求められるスキルを満たしていないケースもある)
3.満たしていない場合はそのギャップを埋めるべくスキルアップのアクションをとる
4.新しく取締役に指名する際はそのポジションに求められるスキルを保持しているか否かを判断基準とする
というのがスキルマトリックスを活用した求められる資質やスキルの「見える化」です。

そして、このスキルマトリックスは取締役会の活性化のみならず、全社員のスキルや業務遂行能力を明らかにし能力開発計画とその実行にもとても役に立つものなのです。

「スキルマトリックス」はポジションごとに作られそれに基づき能力開発がなされる

スキルマトリックスは取締役以外の管理職や一般社員まで、各ポジションごとに作られます。
私が以前勤務していた会社は外資系食品企業でしたが、「コンピテンシーマトリックス」と呼ばれる各ポジションごとに求められる能力をまとめたものが存在しました。ここでは求められる能力レベルを5段階で点数化していました。

ここでのポイントは、ヒトベースではなくポジションベースであることです。つまりヒトが変わってもそのポジションに求められる能力は変わらないということです。
もちろん未来永劫変わらないということではありません。ビジネス環境の変化や経営戦略の転換によって、取締役を始めとして各ポジションに求められる資質や能力は変化します。よって定期的な見直しが必要です。

運用方法は上記に記したのと同じです。これによって各部署やチームのリーダーやマネジャーは、チームメンバーの能力開発計画を一緒に考えスキルアップのアクションを促し支援します。

スキルマトリックスは、今話題の「ジョブ型雇用」のベースとなるジョブディスクリプション(職務記述書)と強く結びついており、ジョブディスクリプションにはそのジョブに求められる資質や能力がスキルマトリックスのかたちで記述されます。

「スキルマトリックス」を有効なものにするために

ここでのテーマは取締役のスキルでしたが、スキルマトリックスは社内の全ポジションに付いて作成されるべきです。これにより各ポジションに求められる資質や能力、スキルが明らかになります。
そしてそのポジションに付いているヒトの現在の資質や能力、スキルを査定しギャップがある場合はそれを埋めるための能力開発計画を立てて実行します。この計画と実行は正に人材開発そのものです。

取締役には各専門分野に必要なスキルに加え経営者としての資質や能力が問われます。今の時代ですと、イノベーション創出の資質や能力さらにその目利きの能力は必須となるでしょう。

2人で話し合う女性社員

さいごに

「会社がどういう方向に向かっていこうとしているのか」
「ビジョン達成のためにどのようなアクションが取られるべきか」
「それを実行するために各ポジションに求められる資質や能力は何か」
経営戦略と人材開発戦略は一体となって策定されるべきものです。

「スキルマトリックス」の作成と運用はかなりの力仕事です。しかし、組織力を強化し成果を上げ続け目指すビジョンを達成しヒトと組織が幸せになるために必要なものであると言えます。

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